case⑤手根管症候群

**手根管症候群（しゅこんかんしょうこうぐん）とは**

手根管症候群は、手首の内側にある「手根管」という狭いトンネルで、正中神経が圧迫されることで起こる疾患です。正中神経は手の親指、人差し指、中指、薬指の一部に感覚や動きを伝える神経で、手根管内でこの神経が圧迫されると、手や指に痛みやしびれ、感覚の鈍さなどの症状が現れます。

**手根管症候群の主な症状**

- **手や指のしびれや痛み**：特に親指、人差し指、中指に現れます。症状は夜間や朝方に強くなることが多く、睡眠を妨げることもあります。
- **感覚の鈍さ**：手や指の感覚が鈍くなり、物を持つときの感覚が弱まることがあります。
- **手や指の力が弱くなる**：筋力が低下し、細かい作業が困難になることがあります。
- **親指の付け根の筋肉の萎縮**：進行すると親指の付け根にある筋肉が痩せ、手の機能が制限されることがあります。

**手根管症候群の原因**

主な原因は、手根管内で正中神経が圧迫されることです。具体的には、長時間の手首の使用、繰り返しの動作（例えばキーボードやマウス操作）、体質、妊娠や糖尿病、関節リウマチなどが関与します。手首を酷使することで腱や靭帯が炎症を起こし、腫れによって手根管が狭くなることもあります。

**整骨院と整形外科のアプローチの違い**

手根管症候群の治療方法は、整骨院と整形外科で異なります。それぞれの特徴と役割を理解することが、効果的な治療への第一歩です。

### 整骨院でのアプローチ

整骨院では、柔道整復師が骨や筋肉、関節のバランスを整えるための手技療法を用いて、症状を改善することを目指します。手根管症候群の治療においては、主に手首や腕の筋肉や関節の緊張を緩め、正中神経への圧迫を減らす施術が行われます。

- **手技療法**：手や腕、肩周りの筋肉をほぐし、手首の動きを改善することで、手根管内の圧力を軽減します。特に手首や前腕の筋肉の緊張を和らげることで、神経への圧迫を緩和します。
- **物理療法**：電気療法や超音波療法が用いられ、血行促進や筋肉の緊張を緩和させます。これにより、痛みやしびれの軽減が期待できます。
- **テーピングやサポーター**：手首の過度な動きを制限し、症状の悪化を防ぐためにサポーターやテーピングを使います。手首を安定させることで、日常生活での負担を軽減します。

整骨院の施術は、比較的軽度の症状や慢性的な痛みの管理に有効です。また、薬や手術を避けたい場合にも適しています。

### 整形外科でのアプローチ

整形外科では、専門的な診断と治療が行われます。正中神経の圧迫を正確に把握するため、必要に応じて検査や手術が行われることがあります。

- **診断と検査**：整形外科では、電気診断検査（神経伝導速度検査）やMRI、超音波検査などで正中神経の状態を確認し、圧迫の程度を判断します。これにより、適切な治療法を決定します。
- **薬物療法**：痛みや炎症が強い場合には、非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）やステロイド注射を使い、炎症を抑えて症状を軽減します。
- **手術療法**：重度の手根管症候群や、他の治療で効果が見られない場合には、手術によって手根管を広げ、正中神経の圧迫を取り除きます。手術後、神経への圧迫が解消されることで症状が改善し、回復が期待できます。

**整骨院と整形外科の違い**

整骨院では、手技療法や物理療法を中心に、自然治癒力を引き出して神経への圧迫を軽減するアプローチが取られます。一方で、整形外科では、検査や薬物治療、場合によっては手術を通じて神経圧迫を直接的に取り除く治療が行われます。

症状が軽度であれば、整骨院での手技療法やリハビリが効果的ですが、症状が進行していたり、長期間治療しても改善が見られない場合は、整形外科での専門的な診断や治療が必要となります。

**どちらを選ぶべきか**

まず、手根管症候群が疑われる場合には、整形外科で正確な診断を受けることが重要です。その後、症状の軽度や進行具合に応じて、整骨院での手技療法を試してみることも良い選択肢です。もし、整骨院での治療で効果が得られない場合や、症状が悪化している場合は、整形外科での治療を優先的に考えるべきです。

手根管症候群は、早期発見と治療が重要です。適切な医療機関で診断を受け、体に合った治療を受けることで、日常生活での支障を最小限に抑えることができます。

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